お金を民主化する
<2005.09.26>
米国のラッセル・スプラーグ教授が指摘したように、老化するお金は「強力な分権的意思決定を前提にしている」のです。
逆の見方をすれば、地方政府による減価公債の発行は、強力な分権的意思決定力を地方政府にもたらします。
地方財政は自主財源が少なく、国からの分配が便りです。
だから、いわゆる「霞ヶ関詣」がおこなわれ、少しでも多く地方にお金が流れるように努力しなければなりませんでした。国家予算は第1章でみたように、官僚と族議員の箇所付けにより大きく左右されます。そこに利権が生まれ、レント・シーカーたちが巣喰う要因ともなります。
お金をつくっている銀行員にしても、国家予算を分配する官僚にしても、決して民主的に選ばれた人間ではありません。
その資質が問われることもなければ、その行為の結果に対して責任を負うこともありません。権限と責任の一致しないところには、必ずといってよいほど腐敗が生じ、不正がおこなわれるようになります。
また、中央にいる人間に地方でどんな事業が必要か、その地方に住む人が何を望んでいるのか、わかるはずがありません。
では、どうすればよいか?
地方政府が減価公債=地域通貨を発行する際は、住民投票をおこなうようにしてはどうでしょうか?
そうすれば地方政府は、その地方にとって何故その事業をおこなう必要があるのかを説明する責任を負うことになります。
仮に過半数の賛成票を得られた場合は、その事業をおこなう際に、地域通貨を財源とすることができるとすれば、無駄な公共事業がおこなわれることもなくなり、町にとって本当に必要な事業がおこなわれることになるはずです。これは没落していた地方に仕事を増やし、失業者をなくし、景気を回復させ、同時に住民参画型の民主的社会を実現することにもつながります。
もし、その事業が環境保全型事業であれば、持続可能な社会を実現させることも容易になります。失業者を雇い、森林保全をしてもらったり、自然エネルギーを普及させたり、空いている公共用地で有機農業をしてもらったり…。もしかすると、これまで農業をやりたかったけれど有機農業では生活できないため断念していた人も転職してくるかもしれません。
また、これを福祉関係でおこなえば、これまで重労働・低賃金であった介護人やヘルパーの人たち待遇も改善され、老後の心配も大幅に低減するかもしれません。
このように、これまで重要でありながらも収益性がないために促進できなかった事業も、地域通貨を財源とすることで、おこなうことができるようになるでしょう。