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<第5章 もうひとつの「お金」は可能だ!>日本人が知らない 恐るべき真実

第5章 もうひとつの「お金」は可能だ!−目次>>陽経済と陰経済

陽経済と陰経済

<2005.10.03>

ベルギー中央銀行で国家電子決済システムの総裁などを歴任後、ヨーロッパ統合通貨ユーロの設計と実施の責任者を務め、現在はカリフォルニア大学バークレー校持続可能な資源開発センターの研究員であるベルナルド・リエター氏は、その著書『マネー崩壊〜新しいコミュニティ通貨の誕生』(日本経済評論社)の中で、

持続可能な豊かさとは
「できるだけ多くの人に選択と創造の自由を与えながら、未来世代の豊かさの可能性を損なわずに、自世代のニーズを満たすこと」

と定義しています。
そして「人類は一世代の内に持続可能性に到達することも不可能ではない」としています。

ただし「それを到達するために、人類の持っている驚異的な創造性を解放するために、お金に対する考え方を刷新しなくてはならない。また、現実になりつつある豊かな技術の可能性をさらに追求していかなければならない」と述べています。

そして、これからあるべき経済モデルを東洋思想である道教【※1】の「陰陽」の概念を用いて提示しています。

西洋人は、物事をみるときに、何事にも二元性をみようとするそうです。
白と黒、昼と夜、暑いと寒い、正義と悪、幸せと不幸などは「相反する二つのもの」という理解をするようです。

戦後、急速に西洋的な価値観を身につけてきた日本人にも、この傾向があるかもしれませんが、しかし、東洋思想では物事を二元的に捉えません。
一つの全体を形成するために陰陽の双方は欠くことのできない部分であり、二つはお互いにつながっています。
「陰」の黒さがあるからこそ「陽」の白さがわかり、夜の暗さがあるからこそ昼の明るさがわかります。冬の寒さがあるからこそ夏の暑さが感じられ、悪事をはたらく人がいるからこそ正義の味方が現れ、不幸な出来事があるからこそ幸せを実感できるのです。

また、「陽」の中にも「陰」があり、「陰」の中にも「陽」があるように、それぞれの二元性の中心には、反対側もまた存在しています。
双方はつながっていて初めてひとつのかたまりとなり、各々の反対側がお互いの形を決めることになるので、全体は、この二つの部分のバランスがとることによって存在しうるものなのです。

このような概念を経済分野に照らし合わせて考えてみたとき、今のフォーマルな通貨を使用した経済を陽経済、そして地域通貨のようなインフォーマルな通貨が適している経済を陰経済としています。

陽経済は、外に向かって拡散していく傾向があり、その特徴をキーワードとして表せば、希少性、競争、成長、他律的、匿名性、自由、孤独などがあげられます。
この陽経済は、工場・設備・不動産などの物理資本と、株・債券・現金などの金融資本を育てるのに適しています。

それに対して陰経済は、内に向かって収斂する傾向を持ち、その特徴をキーワードとして表せば、必要性、協働、安定、自律的、情報公開、不自由、連帯などがあげられます。
この陰経済は、透き通った空気や水、豊かな森、生物の多様性などの自然資本や家族、コミュニティ、平和、文化、生活の質などの社会資本を育てるのに適しています。

陽経済は陰経済からの絶えざる供給があってこそ成り立つものです。
しかし、陽経済の部分が大きくなり過ぎ、陰経済の部分を抑圧してきたので、現在は全体にとって非常に危険な状況になっています。
陰経済の抑圧は陽経済にとっても破滅的な作用を及ぼすことになるでしょう。

ですから、これからは地域通貨を使い、抑圧され瀕死の状態にある陰経済を育てていくことが大切となります。

お金を目的に応じて使い分け、双方のバランスをとっていくことが、持続可能な社会をつくっていく上において重要なエッセンスとなってくるでしょう。

【※1】道教 中国固有の宗教。儒・仏と並ぶ三教のひとつ。不老長生をめざす神仙術と原始的な民間宗教が結合し、老子・荘子の思想と仏教を取り入れて形成されたもの。

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