|HOME|
【訳注:ここで章番号9と10の間に13が入っているが、作者が番号を間違えたのか、あるいは、元々の2001年の文章では番号どおりになっていたものを2006年に再び取り上げる際に、意図的に順番を変えたのか、判明はつかない。しかし原文通りの順番で翻訳しておく。】
9・11の直前に、米国議会の一グループがパレスチナを訪れ、その中の一人が新聞の見出しになった。それはシェリー・バークリー(shelley berkley)議員(ネヴァダ選出、民主党)であり、彼女はパレスチナの長官サエブ・エラカト(saeb erakat)にこう言った。『ここは私たちの国です。私たちは戦争に勝ったのです。もしパレスチナ人たちがユダヤ人の支配の下に生きることを望まないのなら、ここから出て行くことを妨げないでしょう。』
シェリー・バークリー先生の言う『私たち』とは誰のことか? 彼女は明らかに『我々米国人』の意味で言ったのではない。あるいは彼女をワシントンに送った『ネヴァダ州民』でもない。私の知っている限りでは、ネヴァダは中東戦争を行わなかったはずだ。一部のナイーヴな人なら、たぶん「イスラエル」と答えるだろうし、そして彼女を「二枚舌の忠誠」で非難さえするかもしれない。手厳しい評論家先生たちは、彼女の忠誠心をある外国に切り替えたことで彼女への投票者の信頼を裏切ったとして、彼女に不信任を突きつけるかもしれない。しかしそれは不誠実な誤読解であろう。ミス・バークリーは決して忠誠心を切り替えたのではないのだ。下院と上院の他のメンバーと同様に、彼女はたった一つの忠誠心を持っている。それはユダヤの大義(the jewish cause)に対するものである。
ミス・バークリーの言う事は筋が通っている。もしネヴァダ州民や他の米国人たちが激しいユダヤの影響の下に生きることを気にかけないのなら、どうしてパレスチナ人がそれを気にすることがあろうか? 米国人たちは明らかに、彼らの富がグリーンスパン氏の連邦準備委員会の傘の下で、複数の巨大な投資銀行によって運用されていることに対して、全く気にしていないのだ。イエスは救うがモーゼは投資する。ユダヤの影響はその掛け金が止まる場所で終わることはない。米国人の理想はハリウッドによって、その貪欲と成功のカルトをもって形作られている。彼らの思考は大学とメディアの中にいるユダヤの賢人たちによって与えられる。慰めを求めて彼らは「ニューヨーク・タイムズ」チキン・スープをすする。彼らの歴史はホロコースト研究の方向に押し縮められてきた。彼らの本はベロウ(bellow)とマラムッド(malamud)【訳注:saul bellow,1915-2005、bernard malamud,1914-1986は共にユダヤ系米国人の作家】によって書かれている。米国人たちは自国の政治家たちがユダヤの大義のみに心をそそぐ人々の手中にあることを気にもかけない。
彼らがそれを気にしないというのなら、一人のイスラエル・ユダヤ人である私が、どうしてそんなことを気にかけるだろうか? 我が兄弟である米国ユダヤ人たちの偉大な成功に対する誇りの感情などどうでもよいのである。結局、一発の銃声も無しに唯一の超権力を支配することは何ら偉業ではないのだ。これは修辞学的な問題ではない。それは一つの解答を持っている。そしてそれは「自虐的」ではない。私は自分自身に、そして私が出会うユダヤ人の少数派に、完璧に満足している。自虐どころか我々は素晴らしくそして愛すべきものである。そう、他の誰もが素敵であるように。しかし同時にまた、我々は恐るべき強圧的な貪欲で強欲な権力に闇雲に突っ走る社会的マシンを形作る。私は、偉大な米国人ヘンリー・ソロウ(henry thoreau)がアメリカ帝国を愛した、ヴォルテールがカトリック教会を愛した、オーウエルがスターリンの党を愛したのと同程度に、「ユダヤ人」を好んでいるのである。
ユダヤ(jewry)はイスラエルのユダヤ人たちの敵となっている。パレスチナ人の隣人たちと、教会やモスクと、平和に共存したいと望んでいるイスラエル人たちは、米国ユダヤ人指導部のむき出しの筋肉に対抗できないのだ。善良なイスラエル人たちとそのパレスチナ人の同盟者は、そうするだけの力を持たない限り、勝つことができない。ノルウェーの物語で、英雄神thorがその力を試すためにutgardにやって来た。 utgardの神々は彼に一本の角に入った水を飲み干してみろと注文した。彼はやってみたが失敗した。その角は井戸につながっていたのだ。その連結を断ち切ることによってのみ、彼はその注文に応じることができるだろう。もし、海外に住む私の読者たちであるあなた方がユダヤの支援の海をその場所で食い止めるなら、我々イスラエル人とパレスチナ人はこの地で物事を変化させることができるだろう。あなた方の中にいるユダヤ国家の支援者たちは、あなた方と我々の利益のために、封じ込められるべきである。