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マイケル・パレンティ〔Michael Parenti〕;Countercurrents.org;2007年4月26日
説明を要する「ミステリー」がある。すなわち、なぜ過去半世紀に亘り世界全域で、貧困諸国に対する企業投資や対外援助や国際融資が劇的に拡大したのと同時に、貧困も拡大したのか? 貧しい生活を送る人々の数は世界人口よりも早い割合で増大している。これをどう解釈すればいいのであろう?
過去半世紀に亘り、米国の諸産業や諸銀行(及び他の西洋の諸企業)は、「第三世界」として知られるアジア、アフリカやラテン・アメリカのより貧しい地域に大量に投資してきた。多国籍企業を引き付けているのは、豊富な天然資源や、低賃金労働から生じる高利益率であり、また税、環境規制、労働手当や労働安全関連経費のほぼ完全な欠如である。
米国政府は諸企業の対外投資に対する税を免除し、移転経費の一部の支払いを受け持ちさえすることによって、この資本逃避に助成金を支給してきた――ここ本国で職が消失するのを目の当たりにしている労働組合の激怒をまえに。
多国籍企業は第三世界で地元商業を排除し、彼らの市場を先に専有する。米国納税者によって大量に助成された米国の複数の農業関連産業カルテルは、他の諸国で余剰生産物を原価以下で投げ売りし、地元農業経営者よりも安値で販売する。クリストファー・〔D・〕クックが『Diet for a Dead Planet〔死の惑星の食〕』で記述しているように、彼らはそれらの諸国で輸出用換金作物のために最良の土地を買い上げる。通例それは大量の殺虫剤を要する単一栽培作物であり、地元人口に食糧供給する数百種の有機栽培された食糧のための面積が次第に減少していく。
地元住民を彼らの土地から強制退去させ、彼らの自給自足能力を奪うことによって、諸企業は絶望した人で溢れた労働市場を創出する。彼らは貧民地区に押しやられ、(職を手にすることができた時には)乏しい賃金のため骨身を削って働き、多くの場合それはその国自体の最低賃金法に違反している。
例えばハイチでは、ディズニー、ウォルマートやJCペニーといった巨大企業によって労働者に支払われるのは時給11セントである。米国は、児童労働や強制労働の廃止のための国際協定に調印することを拒絶してきた数少ない国のひとつである。この立場は、第三世界全域や米国国内自体における米国企業による児童労働の実施に由来している。そういった場所で最低年齢12歳の子供を含む児童たちが高い死傷率を被り、多くの場合最低賃金よりも低い支払いを受けている。
大企業が海外の低賃金労働から得る黒字が、他の地域の消費者に低価格として転換されることはない。企業は米国の消費者が節約できるようにするために遠隔の地域に外部委託するのではない。彼らが外部委託するのは、彼らの利ざやを拡大させるためである。1990年にインドネシアの児童らが1日12時間労働、時給13セントで作った靴の原価はわずか2ドル60セントであったのにもかかわらず、米国では100ドルあるいはそれ以上で販売された。
米国の対外援助は通例多国籍投資との緊密な提携で行われる。それは第三世界で企業が必要とする基幹施設の建設に助成金を支給する。つまり港や幹線道路、そして精製所である。
第三世界の政府に対する援助はひも付きである。それはしばしば米国製品に費やさなければならず、被援助国は米国企業に投資優遇措置を与えることが要求される。消費を国産の商品や食糧から輸入品へと変化させることで、更なる依存状態、飢餓や負債の原因となる。
かなりの額の援助金が日の目を見ることはなく、被援助諸国の盗癖のある当局者たちのふところへと直接流れていく。
援助(の一形態)には他の出所もある。1944年に国際連合〔UN〕は世界銀行と国際通貨基金(IMF)を設立した。両機関の議決権は各国の資金的貢献に応じて定められる。最大の「供与国」として、米国は最も有力な発言権を有しており、それに続くのはドイツ、日本、フランス、そして英国である。IMFは主に富める諸国から選抜された銀行家や財務省庁関係者のごく限られた集団によって内密に運営される。
世界銀行とIMFは諸国の発展に手を貸すことになっている。実際に起きることはまた別の話である。自らの経済を強化するべく貧しい国は世界銀行から借り入れる。輸出売上高の下落や他の理由により、高い利子を返済できなかった場合、それは再び借り入れなければならない。今回はIMFから。
だがIMFは「構造調整計画」(SAP)を強い、債務国が多国籍企業に税制上の優遇措置を承諾するよう要請し、賃金を低減させ、また外国の輸出や外国の乗っ取りから地元の企業を保護しようと試みることはない。債務国は国営の鉱山、鉄道や公共事業を民間企業に法外な安値で売却することで、自国の経済を民営化するよう圧力をかけられる。
彼らが余儀なくされることは、それに伴う環境破壊に配慮せず、彼らの森林を皆伐に、彼らの土地を露天採鉱に開放することである。債務国は更に保健、教育、交通機関や食糧に対する補助金を縮小しなければならない。債務返済を満たす更なる資金を手にするべく、国民に対する支出はより少なくなる。輸出所得のために換金作物を産出することを余儀なくされ、彼らは自らの国民に更に食糧供給できなくなる。
こうして第三世界全域で、実質賃金は低下したのであり、国の借金は、その貧しい国の輸出所得のほぼ全てが債務返済に吸い上げられる段階にまで急増した――このことが債務国が自国民の必要とするものを更に提供できなくするゆえに、更なる貧困をもたらす。
これで「ミステリー」の説明がなされた。 当然ながら、煙に巻くようなトリクルダウンに追随していなければ全くミステリーではない〔トリクルダウン理論(trickle down theory)に対する言及。「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)するという経済理論」。(引用元)〕。なぜ対外援助や融資や投資が増大したのと同時に貧困が深まったのか? 答え:貸付金、投資やほとんど全ての形態の援助は、貧困を克服するためではなく、地元人口を犠牲にして多国籍投資家達の富を増大させるよう設計されているからである。
そこにはトリクルダウンなどなく、唯一骨身を削って働く多数から、金持ちの少数への吸い上げがあるのみである。
果てしなく困惑した一部のリベラルな評論家らは、対外援助、IMFや世界銀行構造調整は「機能しない」と結論する。その最終的な結果は被援助国にとっての自給自足能力の更なる衰えや貧困の拡大である、と彼らは指摘する。そうであるならば、なぜ裕福な加盟諸国はIMFや世界銀行に対する資金提供を持続させるのか? これらの政策には正反対の影響がある、と指摘し続ける評論家よりもわずかに知的でない指導者らがいるということなのか?
そうではなく、評論家らこそが愚鈍なのである。世界の大部分を所有し、これ程莫大な富と成功を享受する西欧の指導者や投資家がそうなのではない。彼らが援助や対外融資計画を推し進めるのは、そのような計画が機能するからである。問題は誰にとって機能するのかである。誰が得をするのか?
彼らの投資、融資や援助計画の真の目的は他の諸国の大衆を高めることではない。明らかにそれは彼らが関わっている事柄ではない。その目的は、世界的な資本蓄積の利権に奉仕し、第三世界の人々の土地や地元経済を乗っ取り、彼らの市場を独占し、彼らの賃金を下落させ、彼らの労働を莫大な負債に縛りつけ、彼らの公共サービス部門を民営化することであり、そして彼らに正常な発展を許さないことでそれらの諸国が貿易競争相手として現れるのを妨げることである。
こういった点からみれば、投資、対外融資や構造調整は、まったくもってうまく機能するのである。
本当のミステリーは、何故一部のもの達はこの様な分析がまゆつば物であり、「陰謀的な」想像の産物であると見なすのか、である。なぜ米国の支配者達が故意に、また意図的にそういった無情な政策(賃金の削減、環境保護の後退、公共部門の排除、福祉事業の縮小)を第三世界で実行するということに彼らは懐疑的なのか? これらの支配者達はほぼ同じ政策を、ここ私たち自身の国で実行しているではないか!
世界の大部分を所有し――その全ての所有を欲する――人々が、「無能」あるいは「見当違い」または「彼らの政策の予想外の帰結を理解できていない」と考えるのをリベラルな評論家らは止める頃合いではないだろうか? 自らの敵が自分よりも賢くないと見なすことはあまり賢いことではない。彼らは何処に彼らの利権があるのかを承知しているのであり、私達もそれを知るべきである。
マイケル・パレンティの最近の著書は『The Assassination of Julius Caesar』(New Press), 『Superpatriotism』 (City Lights), and 『The Culture Struggle』 (Seven Stories Press)等がある。更なる情報は www.michaelparenti.orgへ。