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イラン破壊のためのイスラエルによるキャンペーンはすでに二つの戦争行動に結び付いている。2006年にイスラエルはレバノンを襲ったが、その狙いはイランの同盟者であるシーア派政治軍事組織ヘズボラーを破壊するものであったのだが、これは失敗した。その1年と少しの後(2007年9月6日)、イスラエルはより挑発的な行動に出た。何の攻撃も受けていないのにシリアの領土を爆撃してある軍事施設を破壊したのだ。シリアとイランが相互防衛協定を結んでいるため、このイスラエルの行動はイランとシリアが奇襲攻撃に対して反応するかどうかを試すために計画されたものだった。
イスラエル諜報部のプロパガンダ機関は、以前の大量破壊兵器の嘘と比較できる偽情報のひとかけらを準備した。彼らは、北朝鮮が建設して核物質を提供している各施設を爆撃した、と言い張ったのである。イスラエルの偽情報は即刻、ロサンジェルス・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナル、そしてニューヨーク・タイムズといった米国の主要新聞や、あらゆる大テレビネットでその通りに繰り返された。親イスラエル・プロパガンダの専門家達はこの攻撃を正当化し、ワシントン・ポスト記事(2007年9月20日)の中で次々と引用された。ワシントン・ポストは、親イスラエルの中東政策サバン・センター(今や信用を失墜したブルッキングズ研究所の中にある)で諜報「専門家」をしていたブルース・リーデル(Bruce Riedel)を引用して次のように書いた。「それが重大な攻撃であったことに疑問の余地は無い。それは極めて重要な攻撃目標だった。それは、イスラエル人たちがシリアとの戦争を非常に気にかけており予想される戦争の可能性を小さくしようと望んだときに起こったものだ(ママ)。この決定は、シリアが戦争を起こす可能性があるという彼らの心配にも関わらずなされたものである(ママ)。この決定はイスラエルの軍事計画者にとってこの攻撃目標がいかに重要であったのかということを反映している」。言い換えるならば、イスラエルが「戦争を気にかけて」いるために、プロパガンダ要員たちがこの攻撃目標の性格を知ることすらないような、挑発を受けていない戦闘行為に携わる、というのである!
2007年9月21日に、米国主要ユダヤ人組織代表者会(the Presidents of the Major American Jewish Organizations=PMAJO)の代表的なプロパガンダ紙(デイリー・アラート)が続いてこのワシントン・ポストで繰り返された好戦的プロパガンダを再生産し、それをワシントンと全国のあらゆるトップクラスの官僚と議員に送りつけ、AIPACのロビイストたちを動員してイスラエルの派手な戦闘行為に対する米国の支持を確保させたのであった。この詐欺的なプロパガンダの機能について明らかなことは、デイリー・アラートがファイナンシャル・タイムズ(2007年9月21日号4ページ)からの抜粋を極度に誤誘導させる形で公表した点である。それは、元記事に含まれていたイスラエル・シオニスト・プロパガンダを暴露する数多くの段落を抜きにして、「可能性ある」シリア-北朝鮮の核の結びつきというイスラエルのプロパガンダの線をつないだだけのものだ。このファイナンシャル・タイムズの記事は、米国進歩センター(the Center for American Progress)で核政策責任者を務めるジョセフ・サークシオン(Joseph Circcione)の次の言葉を引用している。「イスラエルの攻撃がシリア-北朝鮮間の明確な核開発協力に関連するものであるとは非常に考えづらい。基本的で周知の事実なのだが、シリアの40年間に渡る核研究計画はあまりにも初歩的でありいかなる兵器能力をも高めることができるものではない。米国の各大学はシリアよりも大きな核施設を持っているのだ。」(ファイナンシャル・タイムズ、2007年9月21日)ブッシュ大統領の元アジア担当顧問で北朝鮮研究の専門家であり今は戦略国際研究センター(the Center for Strategic and International Studies)にいる人物も同様に、イスラエル-シオニストの核兵器策謀の正体を暴く。「もし北朝鮮がシリアに核兵器用の物質を運ぶほどに愚かだとしたら、あるいはシリアのような北朝鮮の外にある場所で作業をしようとしていたのなら、私にとっては驚愕の極地だろう(ママ)」。イスラエル-シオニストの戦争プロパガンダにとって同様にまずかったことに、ブッシュ政権は2007年中に行ったあらゆる会議の期間に北朝鮮のシリア関与の可能性を一言も取り上げなかった。それがシリアに対する敵意を非常に掻き立てることであり、攻撃を仕掛けるためのあらゆる口実を探しているにも関わらず、である。ブッシュ政権がイスラエルの言い訳に大慌てでなびいていった前述のイスラエルの挑発行為とは逆に、ブッシュはイスラエルによるシリアに対する攻撃についてのコメントを拒否した。どうやら彼の諜報係官から、それが米国を引きずり込もうと願うイスラエルの挑発行為であったとアドバイスを受けたものとみえる。
シリアとその国防に対するイスラエルの戦闘行為、および米国シオニスト権力構造によるその推進は、イランとシリアに対する合同の戦争に米国を引きずり込む最新のステップである。2007年6月から9月までの180に及ぶデイリー・アラート(米国主要ユダヤ人組織代表者会の私的機関)の記事を全体的に調査すると、イランと戦闘行為に取り掛かり、イランに厳しい経済制裁と海上封鎖を押し付け、そしてイランとの全面対決を準備するように要求するという、3種類の要求を米国に対して行っている。イスラエルの好戦的な姿勢に対して疑問を発するような記事や声は唯の一つも見当たらない。デイリー・アラートの全ての記事はイスラエルの主張をオウムのように繰り返す。イスラエルがガザ地区で100万人の閉じ込められた市民に対して行う残虐な電気、ガス、飲料水の供給停止を支持するときでもそうである。それは国際法のもとでの戦争犯罪行為なのだ。デイリー・アラートの文章の中では、イスラエルが丸腰のパレスチナ人の少年や少女を「戦闘員」「狙撃主」というレッテルを貼って殺害する。そしてデイリー・アラートはイスラエルの「和平交渉」を「誠意をもって」実行されているものであるかのように描く。実際には土地の収奪と子供達を含む大勢のパレスチナ人の殺害が継続中なのだ。「米国大統領ジョージ・W.ブッシュが(アナポリス)和平会議を2007年7月16日と10月15日に開催する間に、イスラエル軍は12名の子供を含む104名のパレスチナ人を殺害した。」ファイナンシャル・タイムズ(2007年10月18日号、4ページ)
2006年11月にイラク戦争に反対する選挙民の怒りが増えたおかげで民主党が議会選挙で勝利した後、イスラエルの外相ツィッピ・レヴィはワシントンでAIPACの会議に出席し、数千人のシオニスト活動家と米国民主党・共和党議員の巨大な分隊に対して、ブッシュ政権によるイラク占領を支持し続けるようにかり立て、イランに対する新たな戦争に向けて彼らを扇動した。極めて扇情的な長談義の中で、彼女はありもしないイランの核開発能力の「実際的な脅威」を絶叫した。このユダヤ・ロビー全員がその意思を汲み行動に向かったのである。
シオニスト権力構造の広がりと深さと中央集権的な仕組みはあらゆるものにも勝る。それは「ロビー」という言葉で適当に誤魔化されうるものだ。そういうことで、ミアシャイマーとウォルトはイスラエル・ロビーの研究の中で親イスラエル勢力の権力と政治的影響力を過小評価している。続いて、シオニスト権力構造の力を量るには数多くの要素を計算に入れなければならない。それらの中にはその直接的な力と共に間接的な力も含まれる。シオニスト権力構造が持つ力は、直接的には政治的、学術的、そして文化的な意思決定を行う者達に及び、彼らのポリシーが親イスラエル的、親シオニスト的な利益を支えることを確実にさせる。もっと直接的なその力の表現は、シオニストたちがトップの意思決定部門を占領しイスラエルの軍事的・経済的な利益のための政策を作る場合である。国家安全保障委員会(the National Security Council)でブッシュ大統領の重要な中東顧問を務めるエリオット・エイブラムズがその多くの例の一人だが、祖国安全保障省長官であるマイケル・チャートフ(Michael Chertoff)も同様である。彼は与えられた資金の4分の3を私的なユダヤ組織の「安全保障」に割り当てているのだ。
同様に恐ろしいことに、シオニスト権力構造は数多くのメカニズムを通して間接的な影響力を行使するのである。
その一つとして、議員たちの小グループを通して大多数と交渉する力がある。たとえば、AIPACが法案を作り上げそれをリーバーマン上院議員に提出させ、そしてキル(Jon Kyl)上院議員が共同署名し、イラン革命防衛軍を「テロリスト」としてレッテル貼りを行ったのだが、それはブッシュに攻撃を仕掛けさせる道をならすものである。この法案は議会の80%の賛成を得て通過した。
累積的な権力はある一つの案件に対してシオニスト権力構造の様々な要素が集中することによって作られる。例えば、親イスラエル的な作家とあらゆる主要組織と左翼から極右までの範囲にいるユダヤ人たちが、ミアシャイマーとウォルトの論文とそれに続く本を、共同で非難する。そのほとんどが人身攻撃(「反ユダヤ主義者」)か、あるいは事実に基づくデータを無視する非論理的で複雑怪奇な主張の、どちらかに訴えるのだ。
プロパガンダを張ることはシオニスト権力構造好みの強力な武器である。これは、現在と未来の政策立案者を恐れさせるためにイスラエルとシオニスト権力構造による懲罰的な批判を上手にばら撒くことである。その例として、ハーヴァード法科大学院のシオニスト・ファシストの教授であるアラン・ダショーヴィッツ(Alan Dershowitz)はシオニスト権力構造に支えられてキャンペーンを成功させ、ノーマン・フィンケルシュタイン教授を大学のポストから追い出した。これが将来イスラエルを批判する可能性のある全ての者に対する「見せしめ的な懲罰」として機能するのである。ダショーヴィッツのキャンペーンは、ナチの死の収用所を生き延びたフィンケルシュタイン教授の病気の母親をユダヤ人「カポ」つまりナチ協力者と中傷するまでに至ったのである。
シオニスト権力構造は、私的・公的な両面で相互に強制力を働かせあう複合的な手段を持っている。大きなスケールで長期間の政党と選挙に投資することは議会への影響力を手に入れることである。これは次に、党全体の大統領指名や議会で委員会の作業に対する支配権を手に入れることで、偉大な少数派であるシオニスト議員団の権力を増大させることになる。これが相互にフィードバックし、米国の中東外交政策を形作ることや主要新聞や週刊誌などの各メディア産業分野で意見欄に親イスラエル作家が登場することで、シオニスト権力構造のより大きな影響力を育てるのである。
シオニストの力はまた、長期間にわたる曲解に満ちた全く一方的なプロパガンダ・キャンペーンの結果でもある。それはイスラエルのアラブ人、特にパレスチナ人の批判者を悪魔化し、(世界で第4、中東唯一の核戦力を誇る)イスラエルを民主主義の砦でありそれが悪意に満ちた独裁政権に取り囲まれているかのように描くのだ。この手法と主要メディアのほとんどの部分へのコントロールを通して、このシオニスト権力構造は、イスラエルによるレバノンの人口密集地やガザなどのあらゆる場所に対する恐怖の爆撃などの出来事に対して極めて偏った報道を提供する。米国でのシオニスト権力構造によって計画される世評作りの力は中東における現実を悪化させる作用として働き、それが、イスラエルによる軍事支配と土地収奪そして恒常的な暴力的攻撃という40年間の苦しみを受けるあらゆる年齢と男女のパレスチナ人犠牲者を暴力集団であるかのように仕立て上げ、イスラエルの惨殺者たちを善良で平和的な犠牲者であるかのように描くまでに至っているのである。