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ユダヤ・ロビー(親イスラエル・ロビーと呼ばれるもの)について言及する場合、大多数の専門家たちとアナリストたちは、米国の軍事政策の計画と実行に手をつける右派の政府官僚とテクノクラートのグループについて語る。
このユダヤ・ロビー(右翼保守派)に対しては、それが、米国の外交政策の中でイスラエル政府と国家の軍事日程と政治的・地政学的利益を押し付ける継続的な戦略目標を作る元凶であるとされる。
その言葉どおりこのロビーは、米国の権力機構のあらゆる階層で同時多発的に展開される経済的・政治的圧力の超巨大なマシンである。その権力機構には、ホワイトハウス、議会、国防総省、国務省、CIAと種々の諜報機関といった重要なものが含まれる。
継続的な戦略目標として、ユダヤ・ロビーは米国の外向政策の中でイスラエル政府と国家の軍事日程と政治的・地政学的な利益を押し付けるようにその行動の方向をとっていく。米国国家の機構を操る官僚とロビイストたちを利用しながらである。
ユダヤ・ロビー(『右側』)を通して、軍事国家イスラエルは米国の外交日程の中に自らの戦略を押し付け続けている。何よりも国連安全保障委員会の中で、この国際政治の中心組織でのワシントンの公的な代表者に化けおおせるのである。
その任務を果すためにこのロビーは、政策決定の中心であるホワイトハウス、議会、国防総省、国務省、そして米国の諜報組織網の中で、鍵を握る地位の役職を手にしている。
ぺトラス【訳注:James Petras、ワシントンBinghamton Universityの社会学教授で反帝国主義活動家:ユダヤ・ロビーを弁護するノーム・チョムスキーとは鋭く対立している】によると、親イスラエルロビーは議会や大手マスコミや金融機関、年金基金とキリスト教原理主義組織に対してその影響力と主導権を増大させていると思われる。ロビーには米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)や米国有力ユダヤ組織代表者会議、政治活動委員会(PAC)、そして何百もの公式・非公式な地方組織が含まれているのだ。
ロビーのテクノクラート(ネオコン)たちは基本的にイスラエル・シオニストのロビー、また右派キリスト教、シンクタンク、基金、そして新聞・TV・ラジオの大手メディア機関のロビー出身である。また彼らは軍産複合体の雇われ経営者ロッジのメンバーでもある。
米国のユダヤ・ロビーは1967年のアラブ・イスラエル戦争後の中東情勢を通して米国政界で巨大な影響力を手に入れた。その戦争の年に米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)が創設され、ニクソン政権はイスラエルを中東地域における米国軍にとっての属州憲兵に変えたのである。
そのロビーで最も傑出したメンバー(副大統領ディック・チェイニーと国防長官ドナルド・ラムズフェルドの周辺にいる政治的人物たちの中核)の中でも、元国防副長官ポール・ウォルフォヴィッツ(現世界銀行総裁)が実際的な「頭脳」としてずば抜けている。
このグループの他の注目すべきメンバーでは、元ペンタゴンNo.3のダグラス・ファイス、副大統領ディック・チェイニーの元首席補佐官であるルーイス・「スクーター」・リビー、米国の国連大使ジョン・R.ボルトン、国家安全保障委員会で中東政策を担当するエリオット・アダムスがいる。
同様に注目すべきメンバーとして、元CIA長官で、サダム・フセインと9・11や炭素病の手紙とを結び付ける作戦を率いたジェームズ・ウールセイ、そして、ある企業のスキャンダルの後で国防総省の補佐官を退いたリチャード・パールがいる。
彼らがその米国政府における役職を終えたならばすぐに、米国エンタープライズ研究所(AEI)や米国戦略国際問題研究所(CSIS)といったシンクタンク(戦略研究所)にその身を落ちつけるのである。そしてそこから私的な働きかけでロビーのために知恵を出し交渉を行い続けるのだ。
ロビー(『右側』)の機構を運営する資金は巨大企業、石油資本、兵器産業、先端技術産業、金融業からやってくるのだが、それらは軍産複合体と共にウオール・ストリートとも取引を行う。また資金は同様にブラッドリィ(Bradley)やオリン(Olin)といった形の保守系の基金からもやってくる。これらはすでにこの世にいない大金持ちが残した遺産を利用した基金なのだ。
イスラエル・ロビーと保守系シンクタンクの関連の中で最大のものはワシントンにある国家安全保障問題ユダヤ研究所(JINSA)である。これはリクードを援助し、国防総省中の多くの非ユダヤ人専門家が関わっているのだが、彼らはイスラエル国家にある現在のシオニスト政府軍国主義者たちの顧問という名目でイスラエルを常に訪問している。
JINSAは1976年に創設されたが、もう一つのグループである安全保障政策センター(CSP)と一緒になっていた。そして、副大統領ディック・チェイニー、ネオコンのポール・ウォルフォヴィッツやリチャード・パール、国務次官ジョン・ボルトン、国防次官ダグラス・ファイス、マイケル・レディーン、元国連大使ジーン・カーパトリック、ステファン・ブライァン、ジョシュア・ムラヴチック、ユージーン・ロストウ、元CIA長官ジェイムズ・ウールセイ、および様々な将軍や退役軍人たちから成り立っている。
ロビー(『右側』)の官僚とテクノクラートのグループは、副大統領ディック・チェイニーの仲介によってブッシュ息子政権から権力を授かった。チェイニーは政権移行期間(11月の選挙から1月の政権交代までの時期)の作業にあたっていた際にG.W,ブッシュの政治指南役とも言える人物であった。
チェイニーは、G.W.の父親で仲間であり友人でもある元大統領ジョージ・ブッシュの影響力に包まれて相談を受けたのだが、ユダヤ・ロビー(『右側』)の知識人とテクノクラートの最も優秀な者たちを政権の第一線に据えるために、この環境を利用したのだった。
この鍵を握る場面以来、彼らはこの帝国の外交政策の新たな座標軸の建設を始め、米合衆国の新しい植民地戦略を計画した。つまり、黒人軍国主義者コンドリーサ・ライスの文書によって形を与えられた「悪の首領」に対する予防的戦争である。【訳注:これは実際には、アメリカ新世紀計画(PNAC)によってそれ以前に青写真が作られていたと見るべきであろう。】
この戦略の開始において、ロビー(『右側』)はビン・ラディンと「恐怖のテロリズム」についての陰謀論を作り始めた。それは9・11の後にアフガニスタンの侵略、およびその後のイラク侵略を正当化するのに役立った。
これらの侵略を合理化した衝突の論理と仮説は、特別計画室(CIAと諸諜報組織に類似した機構)の中でユダヤ・ロビーによって練り上げられたものである。それには後にブッシュの国家安全保障担当補佐官となるコンドリーサ・ライスによって率いられるチームが直接に関わっていた。そして彼らはコリン・パウエル(現在は退職)と共にホワイトハウスの中で影響力を行使する第一線を形作った。
それ以来ロビーは周知のように、ブッシュに対するサダムの化学兵器に関する情報の供与やビン・ラディンのアルカイダ組織との関連の可能性などといった、偽情報を元にしての新たなイラク侵略の合法化された基本原理を作った。
彼らが『嘘製造工場』という異名で評価された経緯から、このペンタゴン内のロビーの不可視なオフィスを知ることができる。
実際に、ディック・チェイニーとドナルド・ラムズフェルドを政治的なボスとして頂くネオコン・ロビーは、イランとシリアに対する目標を絞った軍事行動を命令するようにホワイトハウスに圧力を強めている。それは基本的には以前のイラク侵略で実行したような『選択的』爆撃である。
ユダヤ・ロビー(『右側』)は『イスラエルに対するアラブの脅威』を壊滅させるために中東の地図のあらゆる場所でおおっぴらに軍事介入を推し進めている。そして、イスラエルとトルコだけがこの地域での真の国民国家であると頑強に言い張っており、第1次湾岸戦争以来いくつかのアラブ諸国の解体を予想し続ける。
その実際の『聖書』は、「明確な変化:国土保安のための新たな戦略【訳注:英語での題は‘A Clean Break: A New Strategy for Securing the Realm’】」と題された1996年の文書に凝縮されている。これはJINSAグループによって書かれたものであり、次のイスラエル首相となるベンジャミン・ネタニヤフに助言するためのものであった。
この文書は中東の『ボーリング理論』の根に水を与えるものであり、それによるとイラクに対して実行された政権交代劇は中東の様々なアラブ諸国を突き崩すはずのものであった。
同じ論理が現在再び、イランとシリア、そしてイラクで米国占領軍と戦うアラブ過激組織にその照準を向けられつつある。
このような点から、我々はユダヤ・ロビー(『右側』)を『極右主義者』の官僚とテクノクラートの戦略グループであるとして描いてきた。それは、(クリントン政権の最中に姿を現し、そして9・11以降)軍事日程と米国外交政策の中でイスラエル政府と国家の政治的・地政学的な利益を推し進める活動を開始した。
しかしこのような(専門家たちによって作られた)ロビーの見方は不完全である。それはある重要なテーマを欠いているのだ。