コラム
■ 劣化ウラン弾は、原発の廃棄物処理!?
関連page:出口なし! 天然のウランは、ウラン238が99.3%、ウラン235が0.7%という割合で出来ています。
ウラン238は特殊な環境でなければ核分裂は起こりにくいのですが、ウラン235は核分裂を起こしやすいので「燃えるウラン」とも言われます。つまり、天然ウラン程度のウラン235の比率では原子力発電所の燃料としては使えないので、ウラン235の比率を天然のものよりも高める「ウラン濃縮」という作業が必要となります。
この「ウラン濃縮」のあとに出る低レベル放射性廃棄物(ほとんどがウラン238)を劣化ウランといいます。
100万キロワット級原発を1年間動かす場合、燃料として濃縮ウランが30t必要となりますが、そのときに発生する劣化ウランは160tにものぼります。
2003年1月末現在、日本の原発は53基、電気出力総計459.7万kw。世界で運転中の原発は436基、合計出力は3億7373万7000kw。これらが全部フル稼動するとすれば1年間に発生する劣化ウランの量は、日本の原発分で7300t余り、世界全体では実に6万tにも達することになります。2002年12月31日現在、貯まっている劣化ウランの量は、一位の米国で約73万t、二位のフランスで約30万t、三位の日本で約1万tといわれています。
この膨大な劣化ウランを兵器として米国が転用したのは、1970年代前半だったとされています。
もともと比重の大きいウランは、砲弾や銃弾に使えば鋼鉄などを紙のように打ち抜きます。湾岸戦争ではイラクの戦車が次々に爆発炎上しました。これは、撃ち込まれた劣化ウランが鋼鉄の装甲板に命中した衝撃で高温になって溶け、戦車内部に飛び散り、瞬時に自然発火し、摂氏3000度以上の高熱により戦車の砲弾や燃料に引火したためです。
この圧倒的な威力に魅せられた台湾、韓国、タイ、イスラエル、サウジアラビア、トルコ、クウェート等20ヶ国の政府が、劣化ウラン弾を購入し、配備するようになりました。劣化ウランはウラン濃縮で出る核廃棄物であるため、原材料費は無料に近く、ウランの代替になるタングステンなどの金属に比べてコスト的にきわめて安上がりです。膨大に生み出され続け処分に困る核のゴミを兵器として外国に売却できる、また廃棄(爆弾として投下)できることは、米国エネルギー省と軍事産業にとって一石二鳥の策なのでしょう。
しかし、劣化ウラン弾を使用される側に立てば、非常に恐ろしい兵器です。
劣化ウラン弾は目標に当たるとウラニウム粒子が微粉末状になって拡散します。つまり、放射能が空気中や水に紛れ込んで広い範囲に広がり、環境や人体を汚染するのです。生き物は自然につくられた放射能は貯めませんが、人工的につくられた放射能の方は栄養と間違えて貯めてしまいます。植物が栄養と思って集め、それを微生物が集め、それを小さな生物が集め、それを大きな生物が集め、と数万倍に濃縮してしまうのです。ですから、環境中に放出された放射能は低レベルでも、人間が取り込むときには数万倍の濃度に変わっています。
放射線の影響は外から浴びるより、体内に食べ物などから取り込んだ時の方が、被害が大きくなることがわかっています。
放射線の影響被害は、距離の二乗に反比例しますから、1メートルの距離からの影響を1とすると、体内の細胞表面から0.1ミリのところにある放射性物質による被爆の影響は1億倍になってしまうのです。
内部被爆の場合、飛距離の短いアルファ線とベータ線は身体の中で止まってしまうので、持っている全てのエネルギーが細胞組織原子のイオン化等に使われます。
アルファ線の走る距離は、身体組織の中では40マイクロメートル(1マイクロメートル=1000分の1ミリメートル)、その間にほぼ10万個のイオン化がなされます。その時、結合していた原子同士が切断され、染色体などが損傷を受けるのです。また、切断された原子同士は再び結合しようとします。イオン化された個所が離れている時は、安全に元の相手と手を結ぶことができますが、イオン化された個所が密集していると誤った相手と結合してしまいます。「高密度にイオン化がなされること」「誤った再結合をした細胞が活動し始めること」この2つ理由で癌の芽が生じる可能性が極めて高くなるのです。
特に成長期にある人ほど被害を受けやすく、大人より子どもは10倍敏感、胎児は100倍敏感といわれています。
空気や食べ物を通じて体内に取り込まれ被爆した結果、イラクでは多くの子どもたちが白血病を中心とした悪性腫瘍となりました。また、経済制裁によって薬がないという背景もあり、大勢の子どもたちがなす術もなく死んでいったのです。
【グラフ】バスラにおける小児ガンなどの発症推移
http://www.nodu.net/du/DUandUSwar_yamazaki02.htm
【参考】劣化ウラン関連の諸資料リンク
http://www.jca.apc.org/DUCJ/siryo/siryo-i.html
米軍は、湾岸戦争で300〜400t、アフガニスタンで500〜1000t、イラク戦争で800〜2000tの劣化ウラン弾を使用したとされています。
また、ボスニアやコソボでも使用されました。劣化ウランの放射能半減期は45億年ともいわれています。これほど長期に渡り殺傷能力を持つ兵器は他にありません。原発が稼動し続ける限り、劣化ウラン弾が地球を汚染していき、人間を破壊していく可能性も高いと思われます。
【2005.8.19】