ODAは途上国のためのものか?
<2005.08.26>
途上国を債務の鎖につないでいるのはIMFや世界銀行だけではありません。
各国がおこなっている政府開発援助(ODA)もまた、途上国を債務奴隷とさせています。
【DAC(開発援助委員会)諸国のODA比率】
日本のODAを例にあげて、その構造をみてみましょう。
日本のODAは、国際機関を通じたODAが約3割で、残りの約7割が二国間ODAです。
援助というと無償というイメージがありますが、無償の援助(贈与)は53.3%(2002年度)であり、残りの46.7%は円借款と呼ばれる金貸しです。日本のODAは巨額であり、世界最大の融資機関といわれている世界銀行の約2倍ものお金をODAとして貸し付けています。その分、私たちは債務国をどんどん追い詰めているといってもよいでしょう。
ちなみに、この「援助」の原資は、財政投融資資金つまり、私たちの郵便貯金、年金、簡易保険です。また、日本からODAを受ける時も、IMFや世界銀行と同様の構造調整プログラムに従うことが条件となります。
日本の戦後賠償として始まったODAは、吉田茂元首相が「これは賠償ではない。ビジネスだ」と発言したとおり、国内公共事業の延長線上でおこなわれてきました。
日本のODAの初期におこなわれた多くがダム建設であり、それを受注したのが日本の企業です。
なぜダムをつくるかというと水力発電で電気をつくるためです。電気をつくるのに一番コストが安いのは水力発電とされています。ただ、実際は、いずれダムが埋まってしまいますので、長い目でみれば高くつくのですが、あとのことを無視して考えるなら一番安い方法なのです。そして、そのダムで電気をつくらせ、その電気でアルミをつくらせる。そのアルミは日本に輸入されるという構図になっています。
アルミは「電気の缶詰」といわれるほど、たくさん電気を使います。ですからアルミを安くつくるには電気を安くつくる必要があるのです。そうしてつくられた電気のほとんどがアルミの精錬に使われていました。
ですから、決して途上国の人たちのためにダムや発電所をつくっているわけではないのです。しかも、全世界のアルミニウム埋蔵量の63%を支配するのがたった6社の多国籍企業であり、これらは半独占事業ですから価格決定に大きな影響を及ぼすことができるので、メーカーは非常に安い値段で売らねばなりません。電気の値段よりもアルミの値段の方が高くないと当然、利益にならないのですが、アルミ生産国の現状を調べてみると、電気の値段よりもアルミの値段の方が安い場合があります。つまり、売れば売るほど損をする構造の中で途上国は売らされているのです。そんな状況でつくられたアルミは、ほぼ全部が日本に向けて輸出されます。
当然、日本はアルミの代金を途上国に対して支払うのですが、その収入の大半は借金の返済に当てられてしまいます。
しかも、アルミは精錬の過程で、とても有害なフッ化水素ガスを放出します。
このフッ化水素ガスが風に乗り森へ流れれば、そのあとは風の流れた形に白骨化してしまうといわれるほどです。
援助という美名のもとに、債務国は環境を破壊され、資源も奪われ、しかもお金も残らないという状況に置かれるのです。私たちが気軽に缶ジュースを買い、それをポイ捨てしている裏側で、どれだけ大きな犠牲が隠されているのか、私たち日本人は、よく考えなければならないと思います。