2003年に初版が刷り上ったところで圧力がかかり、全冊印刷所から倉庫に直行となって長らく絶版状態だったリチャード・ヴェルナー氏の幻の名著
『知れば知るほどコワくなる!日本銀行24のヒミツ−不況をつくり、悪化させたのは日銀だった!』から抜粋します。
※画像は、本を元に当サイトで作ったもので、オリジナルのものとは異なります
日銀をはじめとした各国中央銀行を考察してきた著者が、万人向けに分かりやすく、その秘密を解説しています。
- 銀行はおカネをつくって経済のパイを大きくできる
- 本当の「信用創造」は絶大なパワーを持っている!!
- 今の経済理論はすべて間違っている!?
- 中央銀行の誕生で国は支配される立場に
- 中央銀行は恐慌も飢饉も思いのまま
- いい中央銀行 悪い中央銀行
- 不況で最も得をしたのは日本銀行だった
直接金融だけでは経済を支えられない
日本の金融システムは、アメリカなどに比べると、銀行を介した間接金融のウエートが大きい。戦後の経済発展も、間接金融によって支えられてきたといっていい。
それが数年前から、日本の金融システムを直接金融にシフトさせようとする動きがある。企業は主に証券市場から資金調達すればいいと考える人たちがいるのだ。
しかし、間接金融と直接金融は、そう簡単に入れ替えられるものではない。ふたつのシステムが経済に果たす役割には、根本的な違いがあり、それぞれに役目がある。
直接金融では、投資家(企業や個人)がマーケットを通して企業に資金を提供する。つまり、おカネをAからBへ移動させるだけで、総量がふえるわけではないので、経済成長にはつながらない。
一方の間接金融は、市場に銀行を通じて資金が移動するだけと考えられがちだ。だがそこでは、銀行が持つ特殊な機能が発揮され、無視できない影響を経済に与えることができる。「信用創造」と呼ばれる機能だ。
銀行はポンフ役ではなくカネが湧きだす泉
主流の経済理論では、民間銀行は「金融仲介機能」として扱われている。
ところが、実際の銀行は、まったく別の役割も果たしている。自分の帳簿の上で、無からおカネをつくることができるのだ。「おカネをつくれるのは日銀だけじゃないの?」―そう思う人もいるだろう。半分は正解、半分は間違いだ。日銀がつくっているのは紙幣、つまりお札だけ。しかし、私たちが「これもおカネの一種」と考えているものは、現金だけではなく、ほかにもたくさんの種類がある。たとえば銀行預金や郵便貯金も、すぐに現金を引き出せるからおカネの一種だといえる。世の中にあるおカネ(※)は、何も目も前にあるキャッシュだけではないのだ。
民間銀行はゼロからおカネをつくれる
信用創造が経済のパイを決める
日本で発行されている紙幣と硬貨の合計金額は、およそ68兆円(2003年8月現在)。一方、銀行などにある預金の総額は280兆円(同)。実に現金通貨の4倍以上だ。郵便貯金や投資信託、債券などを含めると全体で1340兆円(同)ほどになるから、現金通貨はそのおよそ20分の1ということになる。
それでは、現金を除いた大部分のおカネはなんなのか、数字で表されるだけの「会計上のおカネ」だ。クレジットカード利用代金の銀行引き落しと同じで、銀行決済のほとんどは、現金と無関係に行なわれている。
そして決済機関である銀行は、「会計上のおカネ」をいとも簡単に、つくり出すことができる,「会計上のおカネ」はコンピュータ上のおカネだから、極端にいえば、コンピュータのキーボードを叩けば何億円でも生み出せるのだ。この「会計上のおカネ」が、「信用創造」のもとになる。銀行という金融機関は心臓みたいなポンプ役ではない。むしろ、こんこんとおカネが湧き出てくる泉なのだ。お札をつくることができる日銀、「信用創造」ができる銀行、どちらもおカネを世の中に回すことができるのだ。その意味では、投資家から資金を移動するだけの直接金融が、本当は「間接金融」であり、銀行がつくり出したおカネをダイレクトに貸し出す間接金融が、本当は「直接金融」であるといえる。
世の中のおカネの量は、経済の規模と直結している.つまり日銀と銀行は、おカネをつくったり、「信用創造」を使ったりして、日本経済のパイを左右できるのである。
※世の中にある「おカネ」
世の中に流通しているおカネの量を見るとき、どこまで通貨に含めるかという問題がある。
基本的には次の4つのとらえ方がある。
M1:現金通貨(金融機関保有を除く)と預金通貨の合計=347.6兆円(2003年8月現在)。
M2:M1に準通貨(定期預金・据置貯金・定期積金)を含めたもの=665.1兆円(2003年8月現在)。
M3:M2に郵便局・農協・信用組合などの預貯金や金銭信託を含めたもの=1094.1兆円(2003年8月現在)。
広義流動性:M3に金銭信託以外の金銭の信託、投資信託、金融機関発行CP(コマーシャル・ペーパー)などを加えたもの=1340.1兆円(2003年8月現在)。
日本では上記をもとに、「通貨供給量」(マネーサプライ)の指標として
- M1
- M2+CD
- M3+CD
- 広義流動性
の4つがある。
CDとは、第三者に譲渡できる定期預金(譲渡性預金)のことで、18.9兆円(2003年8月現在)ある。