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イスラエル・ロビーと米国の外交政策

2.戦略的な重荷

この驚くべき寛容さはイスラエルが米国にとって重要な戦略的資産であるか、あるいは米国が支持すべき、心を動かされるような道徳的主張が存在するのならば理解可能だろう。しかし、いずれの説明も説得力がない。イスラエルが冷戦期間中に資産であったとの主張もある。1967年以降米国の代理人として働くことによりイスラエルはソ連の拡張をこの地域で封じ込めるのを助け、エジプトやシリアといったソ連の顧客に屈辱的な敗北を与えてきた。イスラエルは時にはフセイン国王のヨルダンなどの他の米国の同盟国の防衛を助けてきた。また、イスラエルの軍事的能力は、ソ連の顧客である国々を支援する為にソ連により多くの支出を余儀なくさせてきた。イスラエルはソ連の能力についての有用な情報を供給してきた。

しかし、イスラエルを支援する事の対価は決して安くはなかったし、イスラエル支援は米国のアラブ世界との関係を複雑なものにした。例えば、10月戦争の期間中に行われた22億ドルの緊急軍事援助の決定は西側諸国の経済に重大な影響を与えたOPECの石油禁輸の引き金を引いた。それにもかかわらず、イスラエルの軍事力はこの地域での米国の国益を守る立場につくことはなかった。例えば米国は1979年のイラン革命で石油の供給への懸念が高まった時にイスラエルに依存することは出来ず、その代わりに自分で緊急展開部隊を作り出さねばならなかった。

第一次湾岸戦争はイスラエルが如何に戦略的な重荷になっているかを明らかにした。米国は反イラク同盟を破壊することなしにはイスラエルの軍事基地を使用することができず、イスラエル政府がサダム=フセインに敵対する同盟に悪影響を与えることを防ぐためにパトリオットミサイルの発射台などの資源を振り向けることを余儀なくされた。2003年にも歴史は同じ事を繰り返した。イスラエルは米国のイラク攻撃を待ち望んでいたが、ブッシュ大統領はアラブ諸国の反対の引き金を引くことなしにはイスラエルに援助を頼むことはできなかった。それ故、イスラエルはまたもや傍観者となった。

1990年代に始まり、そして9/11以降更に顕著になった傾向であるが、米国のイスラエル支持はアラブとイスラム教世界に起源を持つテロリスト集団と、それらの集団を支持し大量破壊兵器を求める「ならず者国家」に両国が脅威を受けているという主張によって正当化されてきた。この主張はイスラエル政府がパレスチナ人を自由裁量で取り扱うのを米国政府が認め、全てのパレスチナ人のテロリストが投獄されるかあるいは死ぬまではイスラエルに譲歩するよう圧力をかけないことを意味するだけではなく、米国はイランやシリアの様な国を追求すべきであることも意味する。このようにして、イスラエルの敵は米国の敵であるからと言う理由で、イスラエルはテロへの戦争において決定的な同盟国と見なされている。実際には、イスラエルはテロへの戦争と、ならず者国家に対処する為の広汎な努力においては重荷になっている。

「テロリズム」は単独の敵ではなく、広汎な政治的集団の隊列が従事する戦術である。イスラエルに脅威を与えるテロリスト組織は米国には脅威を与えない。例外は、米国が彼らに干渉する場合である(1982年のレバノンの様に)。更に、パレスチナ人のテロリズムはイスラエルや「西側」に反対する手当たり次第の暴力ではない。それは、おおむねイスラエルのヨルダン川西岸やガザ地区に入植するという長期に渡る運動への反応である。

もっと重要なことは、イスラエルと米国が共通するテロリストの脅威により結びつけられているという主張は因果関係を逆転させているということだ。米国のテロ問題の多くは米国がイスラエルと非常に親密な同盟国であることによるのであり、その逆は成り立たない。イスラエル支持派反米テロの唯一の原因ではないが重要な原因であり、それによってテロに対する戦争に勝利することはより困難になっている。オサマ=ビン=ラーディンを含む多くのアル=カイーダの指導者達がエルサレムでのイスラエルの存在やパレスチナ人の窮状に動機付けられていることには疑問の余地はない。米国のイスラエルへの無条件の支持は過激派に大衆の支持を集め人材を募集するのをより容易にしている。

中東のいわゆるならず者国家について言えば、彼らはイスラエルにとっての脅威であるという点を除いては米国の重要な利益にとって差し迫った脅威ではない。もし仮にこれらの国々が核兵器を保有したら-それは明らかに望ましくはないが-米国もイスラエルも脅迫されることはない。それは、脅迫者は圧倒的な報復を受けることなしには脅威を実行することができないからだ。核兵器がテロリストの手に渡る危険も同様に起こりそうにない。ならず者国家は核兵器譲渡を察知されない、あるいは後で非難され罰を受けることがないという確信が持てないからだ。イスラエルとの関係は米国がこれらの国々に対処するのをより困難にしている。イスラエルの核兵器はその近隣国の一部が核兵器を欲する理由の一つであり、彼らを体制転換で脅すことは単にその欲望を増大させているだけである。

イスラエルの戦略的価値を疑う最後の理由は、イスラエルが忠実な同盟国としては行動していないことにある。イスラエルの当局者は米国の要求を頻繁に無視し約束を破る(住宅建設を止めるとかパレスチナ人の指導者の暗殺を差し控えるという約束を含む)。イスラエルは細心の注意を払うべき軍事技術を中国のような米国の潜在的な対抗者に供与してきた。国務省の査察官はそれを「体系的で増大傾向にある、公的に承認されない供与」と呼ぶ。また、会計検査院によれば、イスラエルは「米国の全ての同盟国の中で米国に対し最も活発なスパイ活動を行って」いる。1980年代初めに多量の機密物質をイスラエルに与えたジョナサン=ポラードの例(それは伝えられる所ではソ連のユダヤ人の出国ビザの増加の引き替えにソ連に譲渡された)に加え、2004年には米国国防省の重要な担当者であるラリー=フランクリンが機密情報をイスラエルの外交官に渡したことが明らかになって新たな物議をかもした。イスラエルは米国に対して諜報活動を行う唯一の国であり、自国の重要な後援者に対し諜報活動を行う意欲はその戦略的価値により深い疑いを投げかける。

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