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ユダヤ・ロビーの“二つの顔”

『左側』のロビー

奇妙なことなのだが、左翼にしても右翼にしても専門家たちは、(ジェイムズ・ペトラスを除いて)ブッシュ政権のネオコンのユダヤ・ロビーにばかり没頭し、以前の他の政権、たとえばクリントン民主党政権について全く語らない。

もしかするとユダヤ・ロビーというのは今日ホワイトハウスを支配する右派原理主義者の占有的な発明品なのであろうか?

『保守系バージョン』にあるユダヤ・ロビーについて語られる際に、どうしてカーターやクリントンを代表とする民主党政権の間に採用されたその『リベラル・バージョン』が無視されるのだろうか? 相互補完的なものであるというのに。

ひょっとして民主党政権では、ユダヤ・ロビーがホワイトハウスと米国の権力機構へ働きかけることが抑止された、とでもいうのだろうか?

もしかしたら民主党政権では、イラクやアフガニスタンでブッシュとその政権によって実行されたような、市場の制覇と天然資源の略奪を意図した合衆国の軍事侵略が抑止された、ということなのだろうか?

米国では、民主党のリベラルが「左翼」と名付けられている。そして、これらの政権(右派保守系と相補的な存在)の間に活動するユダヤ・ロビーは、論理の帰結として、『左側』ユダヤ・ロビーと呼ばれなければならないだろう。

あるいは少なくとも次のことは言えるだろう。『右側』のユダヤ・ロビーが語られる場合、それは今日ではブッシュ(および他のメンバー)の保守右派と共に活動するのだが、その同じロビーが同時並行的に、共和党と同じく民主党の機構の中でも、そしてその大物たちがホワイトハウスに行き着くときにも同様にその機構の中で活動するのである。

例えば、である。クリントン政権の周囲で活動していたユダヤ・ロビーの政治的な統帥者であるサミュエル・バーガー(Samuel Berger)が、最近の大統領選挙で民主党候補のジョン・ケリーの筆頭顧問であったことについて、どのアナリストも問題にしない。

バーガーは『左側』のリベラル・シオニストなのだが、ビル・クリントンが大統領であった間、国家安全保障顧問であった。しかし機密文書を盗んだことが発覚して後に民主党候補ジョン・ケリーの安全保障に関する筆頭顧問の任を解かれた。

サミュエル・バーガー、ウイリアム・コーヘン(William Cohen)、マデライン・アルブライト(Madeleine Albright)は、ビル・クリントン政権の間に、『左側』のユダヤ・ロビーのために、ちょうど今日のブッシュ政権の中でディック・チェイニーやドナルド・ラムズフェルドやコンドリーサ・ライスが果しているのと同様の機能を果したのである。

しかしアナリストたちは彼らについては語らない。単に今日『右側』のロビーが代表するブッシュの鷹派高官のことばかりである。

ホワイトハウスに入り込んで以来、『左側』のシオニスト・ユダヤであるベルガー、アルブライト、コーヘンは、ユーゴスラビアに対する米国の爆撃とその後の侵略で鍵を握る働きをしたのだ。これは1999年3月にNATOの軍事的な共犯者とともにクリントン政権によって実行されたものである。

この3人は同時にまた、イラクのいわゆる「飛行禁止区域」に関連した英米軍による空爆の第一の推進者であった。この爆撃によって、また併行して起こった劣化ウランの放射能によって、一般市民の中に何千人もの死者が作り出されたのだ。

こういった彼らの経歴の1ページは、バーガーやアルブライトなど『左側』のシオニストたちが今日(米国のシステムの中でアナリストや新聞によって問題にされることもなく)、イラク領域でのブッシュの『単独主義的』軍事行動に対する断固とした『民主的な』反対派として登場することを妨げはしない。

リチャード・クラークは9・11テロ攻撃の際にブッシュ政権の犯した「不当な行為」を告発したのだが【訳注:2004年3月に9・11委員会で「ブッシュ政権がテロを防ぐ努力を怠った」と『告発』した臭い芝居のこと】、反テロリズムの専門家であるバーガーはそのための『証拠の提出』で鍵を握る働きをしたのだ。このことは米国の現職大統領の選挙戦術を困難なものにするために、メディアを通して利用されたのである。

クリントン政権はブッシュ政権よりももっと国々を侵略し多くの人々を殺害したのだが、にもかかわらず、今日の帝国の新聞は、彼を無害なプレイボーイであるかのように、あるいは、青少年のための本を書き億万長者の編集者と組んでその「思い出」を出版するアメリカ民主主義の近代的十字軍兵士(少々ミーハーだが)であるかのように紹介するのだ。

ジェイムズ・ペトラスによれば、「クリントン大統領の下でこのアメリカ帝国は、ハリー・トルーマン以来のあらゆる他の大統領の時よりも、はるかに遠くにまで拡大したのである。バルト海沿岸諸国からバルカンの国々まで、引き続いて旧ソ連圏の南部に至るまで、米国は多数のお得意さんとなる国々を確立させてきた。それは、現在あるいは将来のNATOメンバーであり、または『平和の会員』(つまり順番待ちのお客さん)となっている。」

ペトラスは言う。「クリントンの帝国建設のスタイルは、軍事的なそして秘密諜報員による介入を用いて自由経済を浸透させ同時に新しい政治的なお得意さんを作ることであった。」

「この方法【訳注:秘密諜報員を用いての政治介入】は各国政府に対する影響力を強め解体させるために、あるいは独立国の土台を突き崩すために、また欧州や日本の競争相手との競争に勝つために、使用された。これはエシェロン・プロジェクトと呼ばれる高度なレベルの経済スパイを用いたものだったのだ。」このようにペトラスは警告する。

このビル・クリントン親分にとって、民主党員と『左側』ユダヤ・ロビーとに連合する国際的『進歩派』社会民主主義は、ブッシュにとってのステレオタイプな『民主主義』と同様の表現である。

クリントン時代の民主党員と『リベラル』なユダヤ・ロビーは、「外科手術的な」爆撃の発明者であった。それはレーザーによって誘導される「インテリジェントな」ミサイルと爆弾の集中的な使用を表した言葉である。それによって軍事的制圧の方法としての空爆が最高とされる時代が始まったのだ。その実験的なモデルがユーゴスラビアだった。

クリントン政権の間に、サダム・フセインへの暗殺あるいは転覆のためのCIAによる秘密計画が始まったのだ。それは今日イラクでブッシュのために統治している操り人形の高官になっている連中を利用したもので、彼らは後にロンドンとワシントンから「亡命中の反サダム派」として紹介された者たちだった。

1998年に米国議会でイラク解放動議と銘打った決議が採択された後、クリントン政権は諜報機関による偽の証拠とサダムに対する反対派の『製造』にとりかかった。彼を辞めさせる、あるいは軍事的に侵略してイラクの政権を取り替えることを正当化する、という目的を持ってである。

サミュエル・バーガーおよび国防長官ウイリアム・コーヘンを通して、ユダヤ・ロビーは、イヤフ・アラウイ(元イラク首相)のテロリスト・グループと同時にアーメド・チャラビのテロ・グループに対しても強固な推進者となった。このイラク人たちは、サダム・フセインを暗殺し軍事侵略のための条件を準備するために、ペンタゴンとCIAから膨大な資金を手に入れたのである。

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