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ドル覇権の終焉:ロン・ポール下院議員の議会演説
2006年2月15日

原文:http://www.house.gov/paul/congrec/congrec2006/cr021506.htm

それは100年前には「ドル外交」と呼ばれた。第二次大戦後、特に1989年のソ連崩壊後はこの政策は「ドル覇権」へ進化した。しかし、これらの長年に渡る大成功は終わり、我々のドルの優位性は失われつつある。

「金貨を持つものが法律を作る」と言う諺がある。かつては、それは「公正で正当な取引には真の価値を持つものの交換が必要である」事を意味した。最初は単なる物々交換だった。そして、金貨には普遍的な魅力があり、厄介な物々交換取引の代用品として便利であることが発見された。財やサービスの交換を円滑化するだけでなく、雨の日の為に貯蓄したいと考える者にとっての価値貯蔵手段にもなった。

マネーは市場で自然に成長したが、同時に政府の権力も強まってマネーを独占的に支配する様になった。政府は金貨の品質と純度を補償することに成功することもあった。しかし、政府はやがて収入以上に支出を行うようになった。国民は常に増税には反対であった。それ故、王や皇帝たちが金貨に含まれる金の量を減らすことで通貨量を増大させる様になるまで長くはかからなかった。王や皇帝たちは臣民がその詐欺に気付かないことを常に望んでいたが、臣民は常にそれに気付き、激しく反対した。その為、指導者達は他国を征服することでより多くのゴールドを手に入れる事を強いられた。国民は自分達の平均収入を越えた生活に慣れ、サーカスとパンを楽しむようになった。外国の征服はによって贅沢のための資金調達を行うことは、より勤勉に働き多く生産することよりも合理的な代替手段であるように思われた。また、外国を征服することは母国にゴールドだけでなく奴隷をももたらした。征服した土地で人々から税金を取り立てることは、帝国建設の動機となった。この政府システムは暫くの間良く機能したが、人々は道徳的堕落のために自ら生産しようとしなくなった。征服可能な国の数には限りがあり、それは常に帝国の終焉をもたらした。ゴールドがもはや手に入らなくなれば、彼らの軍事力は崩壊した。当時、ゴールドを持つ者は実際に法律を制定し、裕福に暮らしたのだ。この一般的法則は時代が変わっても色あせなかった。金貨が使用され、正直な商行為が法律により保護された時には、生産力の高い国が成功した。強力な軍隊とゴールドを持つ富裕な国家が帝国や祖国の繁栄を支えるための安易な財宝だけを求めて成功するならば、それらの国は崩壊した。

今日もその法則は同様であるが、その過程は著しく異なっている。ゴールドはもはや王国の通貨ではなくなった。紙が通貨となった。現在の真実はこうだ:紙幣を印刷する者が法律を制定する--少なくとも暫くの間は。ゴールドはもはや使われていないが、軍事的優越性と貨幣生産過程の支配によって外国に生産と支援を強制するという目的地は不変である。ペーパーマネー(訳者注:ゴールドなどの実物資産の裏付けのない非兌換紙幣を指すと思われる)を印刷することは偽造に他ならないが、国際基軸通貨の発行者は必ずシステム支配を保証する軍事力の保有国でなくてはならない。この壮大な仕組みは事実上の世界通貨の発行国に永遠の富を保証する完璧なシステムである様に見える。しかし、一つ問題がある。それは、このようなシステムは偽造を行う国家の国民性を破壊してしまうのだ。ゴールドが通貨であった時代に外国を支配してゴールドを手に入れていた場合と同じである。貯蓄すること、生産する事への動機が失われ、その一方で借金やとめどない浪費が奨励される。

国内で通貨量を増大させる圧力の出所は、企業の繁栄の受益者に加えて、補償としてのばらまき福祉を求める人々や障害者が挙げられる。両方の場合とも、各自の行動に対する個人の責任は否定されている。ペーパーマネーが拒絶される時、あるいはゴールドが底をついた時、繁栄も政治的安定も失われる。その国は、経済的・政治的システムが新しいルールに適応できるまでは、従来の収入以上の生活ではなく収入以下の生活に苦しむことになる。今は亡き紙幣印刷過程を動かしていた人々はもはやルールを制定しなくなっている。

「ドル外交」はウィリアム・ハワード・タフト(訳者注:第27代米国大統領、1909-1913在任)とフィランダー・C・ノックス国務長官(1909-1913在任)によって制定された。それは、ラテンアメリカと極東に於ける米国の営利目的投資を増進させる目的であった。マッキンリー(訳者注:第25代米国大統領、1897-1901在任)は1898年に対スペイン戦争をでっち上げ、その必然的結果であるセオドア・ルーズベルト(訳者注:第25代米国副大統領、1901年3月―9月在任、マッキンリー大統領の暗殺により第26代米国大統領に就任、1901-1909在任)によるモンロードクトリンは、米国のドルと外交的影響力を用いて米国の対外投資を保護するというタフトの攻撃的手法の先駆けとなった。この手法は「ドル外交」という有名な肩書きを得ている。ルーズベルトの政策変化の重要性は、米国の内政干渉はもはや、米国にとって利害関係のある国が欧州の支配に対して政治的に、あるいは財政的に脆弱である様に見えるという単なる外見のみで正当化されうるという点にある。我々は正義を主張しただけでなく、米国の商業上の利益を欧州から防衛するという米国政府の公的な「義務」をも主張したのだ。

この新しい政策は19世紀末の「砲艦外交」の後に続くものであり、軍事力による脅迫に訴える前に影響力を獲得可能であることを意味した。ウィリアム・ハワード・タフトの「ドル外交」が明確に示される迄に、アメリカ帝国の種子は植えられていたのだ。米国憲法の制定者から我々に引き継がれた、自国に対する愛情も敬意も失った肥沃な政治的土壌の中でその種子は成長する運命にあり、実際に成長した。20世紀後半にドル「外交」がドル「覇権」に移行するまでに長い時間はかからなかった。この移行は、財政政策とドルそのものの性質の劇的変化なしには起こらなかっただろう。

米国下院は連邦準備制度を1913年に作った。それから1971年までの間、健全財政の原則は意図的に弱体化させられた。この間、連邦準備制度は戦争費用を賄う、あるいは経済を操作する目的でマネーサプライを意図的に増加させることが非常に容易であることを発見した。議会からの抵抗はほとんどなく、その一方で政府に影響力を行使する特殊利益団体は利益を得た。

ドルの優越性は第二次大戦後に非常に促進された。米国は多くの外国とは異なり破壊を逃れ、米国の金庫は全世界のゴールドで満杯だった。しかし、世界は金本位制の規則へと回帰しない事を選択し、政治家はそれを賞賛した。請求書の支払いのために紙幣を印刷する政策は、不要な支出を抑制する政策や増税よりもずっと人気があった。短期的な利益はあるにしろ、不均衡はその後何十年もの期間、制度化された。

1944年のブレトンウッズ合意は英国ポンドに取って代わる卓越した世界的準備通貨としてのドルの地位を確固たるものとした。米国の政治的、軍事的影響力によって、また米国が保有する膨大なゴールドの実物によって、全世界は躊躇なく米国ドル(35分の1オンスのゴールドに等価と定義されている)を準備通貨として受け入れた。ドルは「ゴールド同然」とされ、その比率で図部手の外国の中央銀行が交換可能であった。しかしながら、米国市民にとっては、ゴールドの保有は違法であった。この金為替本位制は当初から失敗する運命にあった。

米国は多くのものが予想したとおりに行動した。米国はより多くのドルを印刷したが、そこにはゴールドの裏付けはなかった。しかし、世界は安心してそのドルを25年以上も受け取り続けてきた?フランスやその他の国々が1960年代末に、米国財務省に輸送された35ドルごとに1オンスのゴールドを支払うという約束を実行するように求めてくるまでは。この結果、膨大な量のゴールドが流出し、全く不完全に考案されていた偽の金本位制の終焉をもたらした。

ニクソン(訳者注:第37代大統領、1969-74就任)が1971年8月15日にゴールドの窓を閉じて残る2億8千万オンスのゴールドの払い戻しを拒否した時に全ては終わった。本質的には米国は破産を宣言したのであり、市場を安定させるために何か別の金融制度が必要であることは誰にも理解されていた。驚くべき事に、新たな制度は米国が世界準備通貨を印刷するに際して何ら制限を加えなかったのだ。ゴールドとの兌換性が存在するという見せかけすらない、全く何の制限もないのだ!新たな政策はずっと大きな不備があるにも関らず、ドル覇権の拡大へのドアが開かれることになった。

世界は何か新しいものに乗り込み始め、途方もない資金運用者達の言いなりになった。そこには、OPECとの間で全世界の原油価格を独占的にドルで値決めするという協定を結んだ米国政府の強い支持があった。これによってドルは世界の通貨の中で特別の地位を手に入れ、事実上ドルの価値が原油によって「裏付けられ」た。その代わりに、米国はペルシャ湾岸の豊富な石油を有する様々な王国を侵略の脅威や国内での政変から守ることを約束した。この取り決めは、この地域での米国の影響力を嫌がるイスラム過激派運動を刺激した。この取り決めはドルに人為的な強さを与え、途方もない財政的利益を米国にもたらした。ドルの力が続く限り、米国は石油や他の商品を非常に割安な価格で購入することで貨幣的インフレーションを輸出することが可能になった。

このブレトンウッズ後体制は1945年から1971年の間に存在した体制よりはるかに脆弱だった。石油とドルの協定は有用だったが、それはブレトンウッズ体制の疑似金本位制には到底及ばなかった。19世紀末期の金本位制より不安定であることは言うまでもない。

1970年代を通して、ドルは崩壊寸前であった。石油価格は上昇し、ゴールドは1オンス800ドルまで急上昇した。1979年には体制を守るために21%の金利が必要となった。未収収益(訳者注:石油ドル体制によるもの)にも関わらず1970年代にドルに加わった圧力は1960年代の無謀な財政赤字と貨幣的インフレーションの反映であった。我々は大砲とバターの両方を手に入れることは出来ないというウィリアム・ベンジャミン・ブライアン(訳者注:ウッドロウ・ウィルソン大統領の元で1913-1915に国務長官に就任)の主張は詐欺ではなかった。

ドルは再度救助され、その後は真のドル覇権の時代が1980年代初期から現在まで継続している。主要国の中央銀行や国際的商業銀行の途方もない共同作業によって、ドルはまるでゴールドであるかの様に扱われている。

連邦準備制度理事会のアラン・グリーンスパン議長(訳者注:1987-2006就任)は下院銀行委員会で、彼が過去に示した金本位制に好意的な姿勢を私が問題として取り上げた際、彼やその他の中央銀行の銀行家は非兌換紙幣(ドル体制)をゴールドであるかのように見なしていると何度も反論した。その度に私は強く反論し、真の価値を持つ貨幣への要求を考慮すれば、彼らが本当にそれほどの業績を残したのならばそれは数世紀に渡る経済学の歴史を否定するも同然だと指摘した。彼は気取って自信ありげに私の主張に同意した。

最近は中央銀行や様々な金融機関(それらは全て不換紙幣によるドル本位制の機能を維持することを既得権益にしている)が膨大な量のゴールドを市場で売却ないし貸し出している。金価格の下落によりその政策には疑問が呈されているにも関らずである。彼らは金価格固定化への希望を決して白状しないが、彼らが金価格の下落が市場に信頼感を与えると信じていること、彼らが紙切れをゴールドに転換することに驚くべき大成功を収めていると信じていることの証拠は豊富に存在する。

金価格の上昇は不換紙幣への不信任の指標であると歴史的に見なされてきた。この最近の努力は1960年代に米国財務省がドルは健全でありゴールドと同じぐらい優れたものであると世界を納得させるために1オンス35ドルでゴールドを売っていたのとは全く異なるものだ。大恐慌の時期でさえ、ルーズベルトは最初の法令の一つで米国市民のゴールド保有を違法とすることで、欠陥のある貨幣システムの指標としての自由市場でのゴールドの価格決定を禁止している。1970年代初めにゴールドの保有が再度合法化された後に、下落するドルからの安全な避難所を求める人々の熱意をくじくために米国財務省とIMFが何トンものゴールドを市場に投げ売りして金価格を固定しようとした時、経済学の法則によってその努力に歯止めがかけられた。

1980年から2000年までの間の市場を欺くための努力も、ドルの真の価値に関して言えば失敗であることが再び立証された。過去5年間にドルはゴールドに対して50%以上も減価している。強力な印刷機や連邦準備制度のマネー創造能力をもってしても、全ての人を常に欺くことは不可能なのだ。

不換紙幣本位体制のあらゆる欠点にも関わらず、ドルの影響力は成功を収めた。この結果は有益に見えるが、システムに組み込まれた酷い歪みが残された。そして案の定、ワシントンの政治家達は只憂慮するばかりで粉飾決算から突発する問題を解決する事が出来ず、その一方で内在する政策の欠陥を理解し解決することも出来なかった。保護貿易主義、為替相場の固定、懲罰関税、政治的動機を持つ制裁、企業への補助金、管理貿易、物価統制、金利と賃金の統制、超国粋主義的感情、軍事的圧力、そして戦争という手段までもが取られた。それは全て、深刻な欠陥のある貨幣システム・経済システムによって人為的に作られた問題を解決するためである。

短期的には、不換の準備通貨の発行者は巨大な経済的利益を手に入れる事ができる。しかし、長期的には世界通貨を発行する国にとっての脅威を引き起こす。今回はそれが米国に当てはまる。諸外国が実物財と引き替えに米国ドルを受け取り続ける限り、我々は抜きん出た存在であり続ける。米国の議員の多くはこれが利益である事を理解していない。彼らは中国の対米貿易黒字を批判している。しかしながら、これは海外に製造業の職が失われる事に繋がる。我々はより他者に依存し自給持続できなくなるからだ。諸外国はその高い貯蓄率によって米国ドルを蓄積している。そして、寛大にもそれを我々に低い金利で貸し戻して、我々の過剰消費の資金調達を助けているのだ。

誰もが聞き飽きたと感じるだろう。しかし、米国ドルがその減価によって外国に従来ほど歓迎されなくなるか、更には拒否される様な時がやがて訪れるだろう。それによって全く新しい試合が開始され、我々は収入以上、生産以上の生活のつけを支払うことになる。ドルに関する心証の変化は既に始まっているが、最悪の事態はこれから訪れる。

1970年代に米国がOPECと結んだ、石油価格をドル建てとするという合意はドルに傑出した準備通貨としての途方もない人工的な力を与えた。全世界にドルに対する需要が生まれ、毎年生み出される膨大な新しいドルが吸収された。昨年だけでM3(訳者注:マネーサプライ指標の一つだが、この演説後の2006年3月に公表が中止されている)は7000億ドル以上も増加している。この人工的なドル需要に米国の軍事力が加わることで、米国は生産力も貯蓄もなしに、そして消費者の支出や赤字の限界なしに世界を「支配」するという類のない地位についた。問題は、それが持続不可能であることだ。

物価高はその醜い頭を擡げ始めており、あぶく銭によってもたらされたNASDAQのバブルは弾けた。住宅バブルも同様にしぼみ始めている。金価格は二倍になり、連邦政府の支出は途方もない規模となり政治家にはそれを統制する意志がない。昨年の貿易赤字は7280億ドルを超えている。2兆ドルの対イラク戦争費用は途方もないものだ。そして、イランと恐らくはシリアに対する戦争の拡大が現在計画されている。 それを止める唯一の力は、世界がドルを拒絶することだ。それはやってくる運命にあり、正常化のために金利を21%に引き上げる事を必要とした1979-1980年より更に悪い状況になるだろう。 しかし、当座の所ドルを防衛するために可能なあらゆる手段が行われるだろう。 米国とドルの保有者は、全ての見え透いた言い訳を継続することで共に利益を得る。

グリーンスパン前議長(訳者注:1987-2006年1月就任)は連邦準備制度を去った後の最初のスピーチで、金価格の上昇はテロへの懸念が原因であり、金融問題への懸念や彼が任期中にマネーサプライを増やし過ぎたことは原因でないと言った。ゴールドの信頼は疑われるべきであり、ドルは支えられるべきということだ。ドルが市場要因により深刻な打撃を受けた時でさえ、主要国の中央銀行やIMFは必ずや考え得る全ての手段を用いて、安定性を回復するためにドルを吸収するだろう。最終的には彼らは破綻する。

最も重要なことは、ドルと石油の関係はドルの傑出した地位のために維持されなければならないことだ。この関係へのあらゆる攻撃は従来同様、力強く反撃されるだろう。

2000年11月にサダム・フセインはイラクの石油輸出をユーロ建てにすることを求めた。彼の傲慢さはドルへの脅威であった。彼の軍事力は欠乏しており、決して脅威ではなかった。ポール・オニール財務長官(訳者注:2001-2002就任)によれば、2001年のブッシュ新政権の初回の閣僚会議の最も主要な議題はどの様にしてサダム・フセインを追放するかであった。彼が米国に脅威を与えた証拠は何ら無いにも関わらずである。このサダム・フセインへの深刻な懸念はオニールには驚きと衝撃であった。

911事件後にブッシュ政権は即時に反応したが、それは侵略と政府転覆を正当化するためにどうやってこの攻撃とサダム・フセインを結びつけるかという問題を中心に展開したことは今では良く知られている。911事件との関連性の証拠なしに、更には大量破壊兵器の証拠なしに、歪曲や猛烈な勢いの偽りの陳述によって世論や議会の支持が作り出され、サダム・フセイン政権の転覆が正当化された。

サダム・フセインが原油をユーロ建てで得ることにより準備通貨としてのドルの完全性を攻撃したため、彼の追放に関する公開の議論は行われなかった。米国がイラクに執着した真の理由はこれであると多くの人々が信じている。私はこれが唯一の理由であるとは思わないが、戦争を遂行する動機に重要な役割を果たしただろうと考える。軍事的勝利の直後からイラクの原油輸出は全てドル建てとなり、ユーロは見捨てられた。

2001年にはベネズエラの駐露大使が、原油輸出を全てユーロ建てにすることを口にした。1年たたない内に、ベネズエラのチャベス政権に対するクーデターが起きたが、それはCIAの協力によるものであったと伝えられる。ユーロを押し出してドルに代わる世界の準備通貨にするというこれらの企ては抵抗に遭い、ユーロに対するドルの大幅な下落は元に戻った。これらの事件はドルの優位性を維持する点で重要な役割を果たしていると思われる。米国政府はチャベス政権の転覆を企てた人々に共鳴しており、その失敗に当惑していることが明らかになってきている。チャベスが民主的に選出されているという事実は、我々がどちら側を支援するかということにほとんど影響していない。

現在では、石油ドル体制に対抗する新たな企てが生まれている。「悪の枢軸」の別の構成員であるイランが2006年3月に石油取引所を開設すると宣言した(訳者注:2007年5月現在、この取引所は開設されていない)のだ。取引がドル建てでなくユーロ建てで行われた場合のことを考えてみるとよい。

多くの米国人は、米国の政策が体系的かつ不必要にイラン人と長年に渡って敵対してきたことを忘れている。1953年にCIAは民主的に選出されていたモハメッド・モサデク政権の転覆を支援し、権威主義的だが親米のシャーを後釜に据えた。1979年の人質事件の時もイラン人は依然としてこのことでいきり立っていた。1980年代初期にサダム・フセインがイランを侵略した際も、米国とフセインの同盟は事態を改善できず、更に明らかなことだが米国とフセインの関係にも大きな影響は無かった。2001年に米国政府が「イランは悪の枢軸の一部である」と宣言したことも、米国とイランの間の関係を改善する事は出来なかった。原子力を巡る最近のイランに対する脅迫も、イランが核保有国に取り囲まれている事実を無視するものであり、イランを怒らせ続ける人々に有効であるとは思えない。ほとんどのイスラム教徒が米国の戦争をイスラム教に対するものであると認識していることとこの最近の歴史を考えれば、イランがドルを弱体化させることで米国に被害を与える政策を採ったことに疑問の余地はほとんどない。イラクと同様にイランは米国を攻撃する能力を全く有さない。それにも関わらず我々はサダム・フセインを世界を支配しようとする現代のヒトラーと見なしてしまった。今回、特に原油のユーロ建て化を計画した後で、イランは米国による侵略の前にイラクが被ったのと同様の宣伝戦の犠牲者となっている。

ドルの優位性を維持することはイラクに対する戦争の唯一の動機ではないだろう。これはイランに対しても同様だ。戦争を望む真の理由は複雑なものであるが、開戦前に宣伝された大量破壊兵器の存在やサダム・フセインと911の関係などの理由が偽りであったことを今や我々は知っている。ドルの重要性は明白であるが、それは中東を作り替えるという新保守主義者達の長年に渡る明確な計画の影響力を減弱させるものではない。イスラエルの影響力もキリスト教のシオニストと同様に開戦要求に一役買っている。「我々の」石油供給を防衛することは米国の中東政策に何十年にも渡って影響を与え続けてきた。

しかしながら、このような好戦的な対外干渉政策の費用の支出は増税、貯蓄増加、米国国民による生産の増加といった古典的方法では不可能である。1991年の湾岸戦争の支出の多くの部分は多くの意欲ある同盟国が負担した。しかし、現在はそうではない。過去にもまして現在は、ドル覇権、つまり世界準備通貨としてのドルの優位性が膨大な戦争費用を負担する事を迫られている。決して終わることのないこの戦争の2兆ドルの費用は何らかの方法で支払わねばならない。ドル覇権はその手段を提供しているのだ。

真の犠牲者たちの多くは、自分達が請求書の支払いを行っていることに気付いていない。何も存在しない状態からマネーを作り出す認可が、価格インフレーションを通じた請求書の支払いを可能にしている。米国国民だけでなく日本、中国、その他の国々の一般的な国民も価格インフレーションの被害を被っているが、それは米国の軍事的冒険の支出を支払う「税」を意味している。それはごまかしが露呈するか、外国の製造業者がドルを受け取らないと決断するか、あるいは商品の対価として受け取ったドルを米国に還流せずに長期間手元に保有するかのいずれかの時点で終わるだろう。通貨制度のいかさまをその被害者から隠すためのあらゆる手段が既に実行されている。もし石油市場がユーロ建てに切り替われば、米国の際限のない国際準備通貨製造能力は削減されるだろう。

米国にとって、価値ある商品を輸入してその対価として減価したドルを輸出するのは信じがたい程の利益である。輸出国は自国の経済成長のために米国の購買力の中毒になっている。この依存は彼らを同盟国にしていかさまを継続させており、彼らの協力によってドルの価値は人為的に高く維持されている。コノ体制が長期間機能できるならば、米国市民は二度と働く必要はないだろう。我々もまたローマ人と同様に「パンとサーカス」を楽しむ事ができるだろう。しかし、ローマ人の持つゴールドが尽き、征服した国家から略奪することも不可能になったことでローマ帝国は滅びた。

我々が変わらないならば、米国にも同じ事が起きるだろう。米国は直接略奪するために外国を占領してはいないが、世界130カ国に軍隊を派遣している。米国が中東の産油国に勢力を伸ばそうと必死で努力しているのは偶然ではない。しかし、昔とは違って我々は天然資源の直接の所有権を主張しているわけではない。我々は単に、我々が欲しいものを買い、我々の不換紙幣で支払いを行うことを主張しているだけだ。米国の権力に挑戦する国は大きな危険を負う。

米国議会はかつてイラクに対して行ったのと同様、再びイランに対する戦争を宣伝している。必要ならば経済的・軍事的にイランを攻撃すると言う議論も現在行われている。これらの議論は全て、失敗に終わった費用のかさむイラク占領作戦の理由と同様の偽りに基づいている。

米国の全経済体制は現在の通貨協定が継続されることに依存しており、そこではドルの還流が決定的に重要だ。現在、我々は毎年7000億ドル以上を寛大な支援者から借りている。彼らは勤勉に働き、商品の対価として紙切れを受け取っている。そして、我々は帝国を守るために必要な全ての資金(国防省予算4500億ドル)以上の金を借りている。米国の軍事力は米国通貨の後ろ盾である。全世界に米国の軍事的優位に対抗できる国は存在しない。それ故に、我々が今日の「ゴールド」であると宣言するドルを受け取る以外に彼らにはほとんど選択枝はないのだ。これこそが、イラク、イラン、ベネズエラといったこの体制に挑戦する国々が米国による体制転覆の標的になる理由である。

皮肉なことに、ドルの優位は米国の強大な軍事力に依存している。そして、米国の強大な軍事力はドルに依存している。外国が実物財の対価として米国ドルを受け取り続け、米国の度を超した消費と軍国主義の資金を快く用立て続ける限り、米国の対外債務や経常収支赤字がどれほど巨額になろうとも現状が維持されるだろう。

しかし、現実の脅威は我々の政治的敵対者から訪れるだろう。彼らは米国に軍事的に対決する能力はないが、経済的に対決しないほど内気ではない。我々がイランからの新たな挑戦を深刻に受け止めている理由はそこにある。イランが米国の安全に対する軍事的脅威であるとの切迫した議論はイラクに対する濡れ衣と同じぐらい信頼できない。しかしながら、イラク攻撃に反対する政治的議論で派手に活動した人々は今回のイランとの対決に全く反対していない。

国民や議会は先制攻撃を主張する人々の安易な主戦論に簡単に納得させられてしまっている様に思われる。人命と費用の損失を計算するまでは、国民が愚かな軍国主義に反対することはないだろう。

奇妙なことに、米国民の大多数にとってイラクでの敗北はもはや明らかであるのに、国民も議会も不必要で危険なイランとの対決を求める主張を黙認している。そして再び、米国がオサマ・ビン・ラディンを発見できず彼の情報網も破壊できないのに、我々は911と全く無関係の戦争でのイラク人との対決を思い止まっていない。全てを中断してサダム・フセインにユーロ建てで原油を得るという反抗に対する教訓を教えるという米国の意志は、原油価格を全てドル建てにする事への利害関係によって説明可能である。そして再度、イランが全てユーロ建てでの新たな石油取引所を開設するまさにその時期に、イランへの制裁と軍事的威嚇を緊急に求める主張が行われている。

真の価値を持たない貨幣の受容を人々に強制しても、それは短期間しか成功しない。結局それは国内・国際の両方での経済的混乱を招き、高い付けが支払われることになる。

正直な交換には真の価値ある物だけが必要であるという経済学の法則は破棄できない。全世界規模の不換紙幣という我々の35年間の実験の結果として起こる混乱状態は、真の価値あるマネーへの回帰を必要とする。我々は産油国が石油の対価としてドルやユーロではなく、金又はそれと等価なものを要求する日が近づいていることを知ることだろう。それはより早期であることが望ましい。

<終>

『国際情勢の分析と予測』より転載

http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/6365844b04c75b5883575a959db93d7b

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